設立趣旨
第二次世界大戦後半世紀を過ぎた現在、我々は日常生活のなかで「戦略」という言葉を耳にする機会が多くなっている。「企業戦略」「経営戦略」「金融戦略」「マーケティング戦略」「人事戦略」「IT戦略」「戦略商品」等々、まさに百花繚乱で、その意味内容はきわめて広範かつ多義的であって、「戦略とは何か」について一定の理解認識を共有しているとはいえない。
そもそも「戦略」という言葉は、語源的には軍事の分野に発祥したものであるが、日本では、この本来の意味との相関関係を十分検証しないまま、政治・経済・経営などの諸分野で「戦略」という言葉が濫用されている。
しかも、われわれ日本人は戦略的発想が貧困で、戦略的対応も拙劣であると批判され、あるいは自己批判して久しい。
そもそも戦略的発想・対応の適否が俎上に乗せられるのは、危機・戦争といった異常事態に遭遇した時である。ではわれわれは平時において、現実に存在するこれらの異常事態を直視し、社会科学の研究対象として取り上げ、真摯に考究してきただろうか。戦争や軍事を忌避する社会科学音痴症候群に陥っていなかっただろうか?
このような反省をふまえ、軍事を根幹として、経営など周辺分野をも包括した総合的研究集団として、われわれは戦略研究学会を設立した。
戦略研究学会は、過去・現在・未来にわたる全地球的な戦略課題を社会科学的に研究し、「戦略学」の確立、質的向上を図るとともに、危機・戦争といった不確実、不透明な異常事態への日本の抗堪力、対応力の向上に貢献することで、既存の学会とは異なる使命を果たせるものと確信している。